
従業員の1人から「給料が振り込まれてない」と連絡がありました。
どうすればいいですか!?



そんな悩みにお答えします。
こんにちは、社労士のキタです。
この記事をご覧の方は、給料日に突然「給料が振り込まれていない」と従業員から連絡を受けて焦っていますよね。
大丈夫です。落ち着いてください。
給料日以外でも給与は振込めますよ。
この記事では私の実体験を元に「給料日以外に給与を振り込む方法」を解説します。
1人だけの給与計算をする方法
1人だけ給与計算する方法は「当月の給与を締めているかいないか」で変わります。
当月の給与をまだ締めていない場合は1人だけ計算を回せば対処が可能です。
問題は給与計算システムを締めてしまって戻れない場合です。次で詳しく解説します。
給与計算システムを締めてしまった場合
給与計算システムを締めてしまった場合は次の2つのやり方があります。
- Excelで計算する
- 給与計算システムが翌月の状態で仮計算する
上記のいずれかのやり方で計算する必要があります。
①のExcelで計算する方法は一番簡単ですが、間違いが起きる可能性が高いです。
②の翌月の状態で仮計算する方法は、時間外手当の計算が変わる可能性があります。
どちらの方法でも間違えやすいので慎重に計算しましょう。
1人で計算するのではなく、別の人にチェックしてもらうことをおすすめします。
給料日以外の日に振り込む方法
給与振込は通常、遅くとも給料日の3営業日前にデータ送信する必要があります。
しかし、給料日が過ぎてしまっている場合は個人口座に総合振込で「差し引き支給額」を振込むしか方法はありません。
総合振込であれば銀行によっては当日振込も可能です。
総合振込のやり方は以下の3つ。
- データ送信で振り込む
- 銀行振込用ソフトで個人口座を登録して振込
- 銀行の窓口に行って現金で振り込む
それぞれ詳しく解説しますね。
①データ送信で振り込む
給与計算システムで「1人だけの振込データを作れる場合」は通常の給与振込の手順で振込めます。
ただし、総合振込の場合は手順が若干異なる場合があるので注意しましょう。
もし、1人だけのデータを作れない場合は②か③の方法で対応する必要があります。
また、給与システムで総合振込のデータを作成できない場合は②か③になる可能性もあるので覚えておきましょう。



力技で銀行振込データを手入力で変更もできますが、危険なのでおすすめしません。
②銀行振込用ソフトで個人口座を登録して振込
銀行振込用のソフト(サイト)で個人口座を登録して振り込む方法があります。むしろこの方法が一般的かもしれません。
もし給与振込が「人事」、その他の振込が「経理」と分かれている場合は、経理に振込をお願いする必要があります。
事情を説明したうえで、従業員の口座と差し引き支給額を経理に伝えて振り込んでもらいましょう。
③銀行の窓口に行って現金で振り込む
銀行の窓口で現金を持ち込んで振り込む方法もあります。
所定の用紙に手書きで金額を書いて、銀行に直接現金を持って行けば振込が可能です。
ただし銀行によっては窓口での給与・総合振込を廃止したところもあります。必ず確認してから銀行に向かいましょう。
給与振込後の処理
振込が終わって一息ついたところで社会保険料や税金の修正作業に入りましょう。
主な修正は以下の5つです。
- 社会保険料の修正
- 所得税の修正
- 住民税の修正
- 給与計算システムの修正
- わび状の作成
それぞれ詳しく解説しますね。
社会保険料の修正
社会保険料は新たに1人追加になったことで当月の合計が変わってきます。
具体的にやることとしては経費計上のデータ更新です。つまり伝票の追加ですね。
計上する項目は以下の通りです。
- 健康保険料(個人負担分)
- 介護保険料(個人負担分)
- 厚生年金保険料(個人負担分)
- 雇用保険料(個人負担分)
- 健康保険料(会社負担分)
- 介護保険料(会社負担分)
- 厚生年金保険料(会社負担分)
- 雇用保険料(会社負担分)
- 労災保険料
- 子ども・子育て拠出金
中でも「子ども子育て拠出金」の計上は忘れがちです。



給与計算が1人追加になるだけでこんなに変更があります。漏れのないように注意しましょうね。
所得税の修正
所得税は毎月10日に納付しているため、納付額の修正が必要です。
とくに追加分をExcelなど給与計算システム外で計算した場合は、給与システムで集計すると漏れる可能性があるため注意しましょう。
納付に間に合わなかった場合は次月に支払えば大丈夫です。ただし残高が残るので、経理には事情を説明しましょう。
住民税の修正
追加で計算した従業員から住民税を天引きされている場合は納付する住民税の修正が必要です。
もし納付まで間に合わない場合は、一旦会社が未計算だった従業員分を立て替えて市区町村に支払う流れにしましょう。
納付額が足りなかった場合は市区町村から連絡が入ります。事情を説明して翌月に納付することを伝えてください。
給与計算システムの修正
Excelなど給与計算システム以外で追加計算した場合は、あとで給与や社会保険料、所得税などを給与計算システムに取り込む必要があります。
なぜなら年末調整の時に集計が狂うからです。
もし、取り込み漏れがあった場合は年末調整を誤って計算することになります。
忘れずに追加しておきましょう。
わび状の作成
会社によっては本人宛にわび状を作成しなければいけません。
わび状で必要な項目は以下の通り。
- ミスの内容
- ミスの原因
- その後の対応
- 今後の改善策
- 問合せ先
それぞれ簡略的に要点のみ書くようにしましょう。
下記にサンプルをご用意しましたので参考にお使いください。
給与計算漏れの対策
ここからは私の経験を元にした給与計算漏れの対策をご紹介します。
今後の対策として参考にしていただければと思います。
コミュニケーションエラー対策
現場と給与担当者とのコミュニケーションが原因で漏れてしまった場合は、お互いのルール作りが必要です。
たとえば、店舗でタイムカードを集計しているなら「集計のチェックシートを作る」。異動情報が漏れたなら「給与を締める直前に最新の異動情報をもらう」などです。
コミュニケーションエラーはちょっとしたことで防止に繋がります。
勤怠集計のミス対策
勤怠の集計ミスは「前月合計人数から入退社人数を足し引きした人数」と「給与計算の合計人数」を比べることで人数チェックができます。
また勤怠システムの設定が誤っていて、一部の人のデータが出力されなかった時にも有効です。
差異があれば「勤怠が集計されていない人がいる」と気づける可能性があります。
給与計算システムの設定ミス対策
給与計算システムによっては誤った設定をしていたために給与計算がされなかった事例もあります。
たとえば、海外出張中で別計算していた人が帰国して「入退社以外の原因で給与計算が開始されたとき」などです。
一番手っ取り早い方法は、勤怠データが入っているのに「給与計算対象外」になっていることを確認することです。
給与計算システムから「給与計算対象外」の人のみをCSVファイルで出力して確認すればこのミスは防げます。
まとめ
1人だけ給料日に給与が振り込まれなかった時は以下の対応を行いましょう。
- 至急給与を振り込む場合は「総合振込」で対応
- データ送信もしくは銀行窓口で振込
- 振込後は経費計上を修正
上記の対応はできるだけ早い方が良いですが焦っている分、ミスが発生しやすいです。
まずは一呼吸おいてから落ち着いて計算をしてください。
そして必ず計算をチェックしてもらいましょう。
以上、参考になれば幸いです。