働き方改革や社内DXの推進が叫ばれる昨今、バックオフィス業務の効率化は多くの企業にとって最優先課題の一つです。中でも、従業員から日々提出される「休暇申請」の手続きは、紙の書類やメール、チャットツールで行うと管理が煩雑になり、集計ミスや確認漏れの原因となります。
こうした課題を解決するため、Google Workspaceに搭載されたAIアシスタント機能を活用し、自社の就業規則に準拠した「休暇申請フォーム」をGoogleフォームを自動作成する手法があります。
本記事では、GoogleフォームのAI機能(Gemini)を用いた具体的な作成手順を分かりやすく解説するとともに、実務で安全かつ円滑に運用するために人間が必ず行うべき修正・改善ポイントを解説します。
本記事で紹介する手順は有料版であるGoogle WorkspaceのBusiness Standard以上を契約している企業様向けです。
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AIを活用した休暇申請フォームの作成手順
Googleフォームの「フォーム作成サポート」機能とGoogleドライブを連携させることで、自社の就業規則をベースにした専用のフォームを自動生成することができます。具体的な手順は以下の3ステップです。
ステップ 1: 就業規則(休暇関連規定)をGoogleドライブへ保存
貴社の有給休暇、特別休暇、慶弔休暇などの詳細が記載されている就業規則(または休暇規定の部分を抜粋した文書)をGoogleドライブに保存します。
対応しているファイル形式は、GoogleドキュメントまたはPDFです。AIが内容を正確に読み取れるよう、テキストデータが保持されているファイルを用意してください。また、ファイル名は「【最新】就業規則休暇規定」のように分かりやすい名称にしておくと、後のステップで指定しやすくなります。
ステップ 2: Googleフォームでファイルを指定する
Googleフォームの新規作成画面を開きます。「フォーム作成サポート (Help me create a form)」の生成画面、またはGeminiのプロンプト入力欄を表示させます。
入力ボックスをクリックし、半角の「@」を入力します。すると、Googleドライブ内のファイル候補がプルダウンで表示されるため、ステップ1で保存した就業規則のファイルを選択して添付します。

ステップ 3: プロンプトを入力してフォームを自動生成する
ファイルが正しく添付されたことを確認したら、続けて入力ボックスに下記のプロンプト(指示文)を打ち込みます。
「添付のファイルをもとに休暇申請フォームを作成してください」と入力後、作成ボタンを押すと、AIが添付ファイルのテキストを解析し、必要な設問項目(氏名、休暇の種類、日付など)をわずか数十秒で自動的に構成し、フォームを作成してくれます。

GoogleフォームのAI生成における実務上の注意点
AIによる自動生成は非常に手軽ですが、AIが作ったものをそのまま実務で使うのは危険です。
なぜなら、AIは就業規則の文字面を機械的に拾い上げて設問を作るため、「実際の労務実務における細かな運用上の都合」を完全には考慮できないからです。
AIが生成した初期のフォームには、実務上の欠陥が含まれている可能性は非常に高いです。例えば下記のようなことが想定されます。
| 項目 | AIが起こしがちな問題・指摘 | 改善策 |
| 「休暇取得理由」の要求 | AIは、すべての休暇に対して一律で「休暇取得理由」という設問を作成し、それを「必須回答」に設定してしまうことがあります。年次有給休暇の利用目的は原則「自由」であり、会社が理由を強制的に尋ねることは避けなければなりません。 | 「年次有給休暇」を選択した人には理由入力欄をスキップさせる、もしくは説明欄に「年次有給休暇の場合は『私用のため』でも可」と明記するなどが考えられます。 |
| 添付した就業規則に書かれていない休暇がある可能性がある | AIが機械的に添付した就業規則を読み取るため、「その他法令による」や「内規による」という休暇は見逃してしまう可能性があります。 | すべての休暇が網羅されているか、最終的に人の目でチェックしましょう。 |
| 「産休・育休・介護休業」の同列扱い | AIは「産休」「育休」「介護休業」を通常の単発の休暇と同じ選択肢に並べてしまうことがあります。これらは長期の「休業」であり休暇ではありません。 | 産休・育休・介護休業については簡易フォームの選択肢から除外し、別途人事部へ申し出るよう案内文を掲載して適切な窓口へ誘導します。 |
| 必要な入力欄がない | 例えば「申請年月日」と「休暇終了日」はあっても、「休暇開始日」が抜け落ちているケースがあります。 | フォームの編集画面で、手動で「休暇開始日」という日付型の設問を追加し、終了日とともに必須項目に設定します。 |
| 事後申請への対応機能がない | AIの生成は一般的に事前に申請する前提の設計になりがちです。社内ルールとして事前申請と事後申請のルールが異なる場合、運用ルールを加味した設計をしなければなりません。 | 例えば「申請区分」という項目を設け、「事前申請」と「事後申請」を選択できるようにします。事後申請の場合は遅延理由を選べる項目も設けます。 |
| 「時間単位の年休」への対応 | 時間単位の年次有給休暇制度を導入している場合、フォームが対応しているかの確認は必須です。 | 選択肢に「時間単位」を追加し、取得開始時刻、取得終了時刻、取得時間を入力できる欄を手動で設置する必要があります。 |
現場で使用する側に立って抜け漏れがないか確認しましょう。実際に現場で運用を始めると「前の運用の方がよかった」という事態を起こさないことがポイントです。
追加するとより良い機能
さらにフォームの完成度を高め、現場の管理を円滑にするために、承認フローの自動化ができれば業務が円滑に進みます。フォーム単体では上長の承認・却下のワークフローを完結できないため、以下のいずれかの仕組みを組み込みましょう。
- スプレッドシートに手動で列を作り、ルールで運用する
- Google Apps Script (GAS) を導入して自動化する
- 拡張機能(アドオン) を利用する
スプレッドシートに手動で列を作り、ルールで運用する
フォームの回答が蓄積されるスプレッドシートに「上長の確認」や「ステータス(未承認/承認済/却下)」の列をあらかじめ手動で作っておき、上長が直接そこへチェックを入れる運用ルールを社内で徹底する方法です。
【具体的な仕組み】
Googleフォームと紐づいたスプレッドシートの右側に、「承認ステータス(プルダウンで選択)」や「承認日」「承認者コメント」といった列を独自に追加します。上長は定期的にこのシートを開き、新しい申請がないかを目視で確認して、手動でステータスを更新します。

| メリット | デメリット |
| ITスキルが全くなくても、スプレッドシートの基本操作(プルダウン作成など)だけで今すぐ始められます。 | 上長がシートを見に行くのを忘れると承認が滞ります。また、誤って他の人の申請行を消してしまう等の操作ミスが起こるリスクがあります。 |
Google Apps Script (GAS) を導入して自動化する
フォーム送信と同時に、申請内容が記載されたメールが自動で上長へ飛び、メール内のリンクから「承認」ボタンを押すことで、スプレッドシートのステータスが自動更新されるプログラムを組む方法です。
【具体的な仕組み】
Googleが提供するJavaScriptベースのプログラミング言語「GAS」を使用して、スプレッドシートの裏側にコードを記述します。「フォームが送信された時」を引き金(トリガー)として、自動的に上長のメールアドレス宛に申請内容と「承認用URL」「却下用URL」を含むメールを送信する仕組みを作ります。上長がURLをクリックすると、自動的にスプレッドシート上の該当行が「承認済」に書き換わります。
AIを使い慣れている方であれば、プログラミング(コード)の作成はAIに任せれば、問題ありません。
| メリット | デメリット |
| Google Workspace標準の機能を使うため追加費用がかからず、自社の要件に合わせて「誰にメールを送るか」など細かくカスタマイズできます。 | 初期構築にコーディングの専門知識が必要です。また、担当者が退職した場合などに「なぜ動いているのか分からない(属人化)」という保守・メンテナンスの課題が生まれやすいです。 |
拡張機能(アドオン) を利用する
Google Workspace Marketplaceで提供されている「Form Approvals」などの承認ワークフロー用アドオンをフォームに導入し、プログラミングなしで承認ルートを設定する方法です。
【具体的な仕組み】
Googleフォームの拡張機能をインストールします。インストール後、設定画面から「誰に承認依頼を飛ばすか」「もしAさんが承認したら、次はBさんに回す(多段承認)」といったルールを、画面上のクリック操作(ノーコード)だけで設定できます。
| メリット | デメリット |
| プログラミング不要で、複数段階の承認フローや、承認が遅れている際の自動リマインド通知など、本格的なワークフローシステムと同等の機能を手軽に実装できます。 | 高度な機能や一定件数以上の利用には有料プラン(月額・年額)への加入が必要になるケースが大半です。また、海外製ツールが多いためUIが英語であったり、外部アプリに自社のデータを連携するための社内セキュリティ審査が必要になったりします。 |
まとめ:AIの手軽さと人間のチェックを掛け合わせる
GoogleフォームのAI作成サポート機能を使えば、就業規則をアップロードしてプロンプトを打ち込むだけで、時間の短縮となることは間違いありません。しかし、本記事で解説した通り、AIが生成したフォームはあくまで「たたき台」に過ぎません。
実際に運用する前に確認を行い、実務を円滑に回すための設計を人間の手でしっかりと施すことこそが大切です。
AIの圧倒的なスピード感という「利便性」と、人事労務担当者の「専門知識・実務視点」を掛け合わせ、自社にとって安全で使いやすいスマートな休暇申請システムを構築しましょう。

