労務の初心者です。
離職票の賃金ってどうやって計算しているんですか?
事例を交えて詳しく教えますよ!
離職票の賃金計算は、月額をそのまま記載すれば良いわけではありません。
時間外手当を戻したり、通勤交通費を月割りしたりなど、離職票の賃金を算出するための計算が必要です。
今回は「離職票の賃金計算」に焦点を当てて詳しく解説します。
離職票の賃金計算がわからなくて悩んでいる方は、ぜひご覧ください。
離職票の賃金を計算する一般的な流れ
離職票の賃金を計算する一般的な流れは以下のとおりです。
- 離職票の対象にならない賃金があるか確認する
- 時間外手当・休日出勤手当・深夜手当などを対象月に戻す
- 通勤定期代を月割りする
なお、この解説では「当月払い・残業代が翌月払い」の会社を想定しています。
1.離職票の対象にならない賃金があるか確認する
まずは、離職票の対象にならない賃金があるか確認しましょう。
離職票の対象にならない賃金の定義は以下のとおりです。
- 臨時に支払われる賃金
- 3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 特別の賃金
たとえば、「賞与」や「結婚祝金」「表彰金」などは対象にならないため、計算から外す必要があります。
なお「その他支給」として支給している賃金は、内容が不明確なため、必ず詳細を確認しましょう。
賃金に含まれるものと含まれないものは下記の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
2.時間外手当・休日出勤手当・深夜手当などを対象月に戻す
当月払いで翌月に時間外手当を支給している場合は、対象月に戻す必要があります。
戻す対象となるのは、時間外手当だけではなく、以下の「勤怠に関連した賃金」です。
- 時間外手当
- 休日出勤手当
- 深夜手当
- 欠勤控除
- 代休控除
- 年末年始手当
そのほか、勤怠の発生に伴って翌月に支払っている賃金は、対象の月に戻して計算しましょう。
たとえば、4月の残業代を5月に支払っている場合は、5月に支払われた残業代のみを4月分として計算するということです。
詳しくは、後ほど計算例の方で解説します。
3.通勤定期代を月割りする
通勤定期代を6ヶ月分や3ヶ月分など一定月分をまとめて支給している場合は「月割り」する必要があります。
この時、端数が出た場合は最終月に計上します。
- 定期代 ÷ 支給月数(割り切れなかった場合は以下の手順)
- 割った金額の小数点を切り捨て額 ×(支給月数-1)
- 定期代-②の金額
- 最終月を算出
たとえば、4月〜9月分の6ヶ月定期代「16,000円」を3月に支給した場合、離職票の通勤交通費は以下のようになります。
- 16,000円 ÷ 6ヶ月=2,666.66…円(割り切れない)
- 2,666円 × 5ヶ月 = 13,330円
- 16,000円 - 13,330円 = 2,670円
- 4月~8月の賃金に2,666円をプラス、9月に2,670円プラス
具体的なやり方は、後ほど計算例の方で解説します。
また、端数計算については下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
※参考:愛知労働局 職業安定部「令和4年度 雇用保険事務担当者研修会」
離職票の賃金計算例
実際に離職票を作成する際の参考事例として、賃金台帳を使った計算事例をご紹介します。
当月払い・時間外手当が翌月払い
この事例では以下の条件で計算しています。
- 当月払い・時間外手当が翌月払い
- 通勤定期代は3月に4月~9月分を支給
- 9月末に退職
赤い矢印は、時間外手当や休日出勤手当、深夜手当など、勤怠の発生に伴う賃金を本来の発生した月に戻すことを示しています。
青い矢印は、実際に月単位で集計するうえでどのように見ていくかを示しています。
また、通勤手当は3月に発生していますが、4月~9月で月割り分を割り当て、端数は最終月に計上しています。
すべて計算し直した結果は以下のとおりです。
赤く示している箇所が修正後の金額になります。
離職票の賃金には、この修正後の賃金(4月~9月)を記載します。
通勤手当の精算があった場合
この事例では以下の条件で計算しています。
※当月支払い・時間外手当が翌月払いの場合は時間外手当をひと月戻します。
- 通勤定期代は3月に4月~9月分を支給
- 9月に通勤交通費の精算で「-2,000円」をマイナス支給
前払いしている通勤交通費の精算として9月に「-2,000円」しているケースです。
この場合、3月に支給した6ヶ月分の通勤定期代から2,000円を引いたうえで、6で割ります。
そして、月割りした額を各月に割り当て、端数が出た場合は最終月に加えます。
再計算した結果は以下のとおりです。
赤く示している箇所が修正後の金額になります。
離職票の賃金には、この修正後の賃金(4月~9月)を記載します。
給与修正があった場合
この事例では以下の条件で計算しています。
※当月支払い・時間外手当が翌月払いの場合は時間外手当をひと月戻します。
- 通勤定期代は3月に4月~9月分を支給
- 本来1月から支給停止するはずの家族手当が支給され続けていたので、5月に「-20,000円」で給与修正
この場合、本来であれば1月から「0円」だったはずの家族手当が支給されていたので、離職票を作成するうえではすべて0円に修正して再計算をします。
赤く示している箇所が修正後の金額になります。
離職票の賃金には、この修正後の賃金(4月~9月)を記載します。
まとめ
離職票の賃金計算は、非常に複雑です。
給与の締日・支払日や通勤定期代の支給の有無、イレギュラー処理など様々なことを考慮しなければいけません。
誤った計算をしてしまえば、退職者の失業保険の金額に関わります。
しっかりと理解した上で、離職票の賃金を計算しましょう。
なお、算定対象期間の基礎日数を算出する際は、下記のツールが便利です。ダウンロードをしてお使いください。
以上、担当者様の参考になれば幸いです。
社会保険や給与計算をミスした時にどう対処していいのかが事細かに書かれています。
実務経験豊富な著者の実体験をもとに書かれているので、参考になります。
こちらも宮武さんの著書です。社会保険の初心者向けに優しく解説されており、やるべき手続きが網羅されています。
「社会保険の手続き自体が何をどうしていいのかわからない」という方にはおすすすめです。
※様式は最新のものでない場合があります。
労務の仕事はExcelとWordは必ず使います。「とりあえず労務で使うことだけ教えてほしい」という方にはおすすめです。
「時給×労働時間の計算」有給休暇取得日数の年度集計」「就業規則の作成時のWord設定」など実務で役立つExcel・Word操作が習得できます。
就業規則の実務本です。厚生労働省が公表しているモデル就業規則の問題点を指摘し、判例に基づいた就業規則の本質が解説されています。労使トラブルを防止する就業規則を作成したい方は、ぜひお手に取ってください。
「時間計算」や「時給計算」ができる電卓の定番です。
給与計算業務を担当している方は持っていて損はしないでしょう。
封筒をとじる時にのりを使ってませんか?のりは手にくっつくし、ムラがあるとうまくくっつかないですよね。
そんな悩みを解消するのがこちらのテープのりです。
スッと線を引くだけで簡単に封筒を閉じることができるので、業務効率化ができます。
封筒を開ける時にカッターやハサミを使っていませんか?カッターは刃をしまい忘れると危ないし、ハサミはまっすぐ切れませんよね。
そんなとき便利なのがこのオートレターオープナーです。
封筒の開けたいところを滑らすだけできれいに封筒を開けることができます。手を切る心配もないので安心して使えます。
電話メモを付箋で書いている人におすすめのグッツです。
このスタンプは付箋に伝言メモを押せるという便利スタンプ。スタンプを押せば必要最低限のことしか書かなくていいので業務の効率化ができます。