労務初心者です。標準報酬月額って何ですか?
わかりやすく教えてください。
そんな疑問にお答えします。
社会保険の業務を初めて行う人にとって「標準報酬月額」は聞き慣れない言葉でしょう。
しかし労務を担当する以上、「標準報酬月額」を理解しなければ、社会保険の手続きや給与計算を進めることはできません。
今回は、労務初心者の方に向けて「標準報酬月額とは何か」について、わかりやすく解説します。
「どうしても理解できない」と悩んでる方は、ぜひご覧ください。
標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、簡単に言うと社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)の保険料を決めるうえで使用する「みなし給与額」です。
たとえば、実際の給与額が月21万円~23万円の従業員は「全員一律で月22万円とみなして社会保険料を計算しましょう」ということです。
社会保険料の計算では、このみなし給与を「標準報酬月額」と呼んでいます。
つまり、「標準報酬月額×保険料率」で計算した社会保険料を毎月支給する給与から天引きしているということです。
賞与は「標準賞与額」で社会保険料を計算します。「標準報酬月額」は給与の社会保険料を計算するとき使うものです。
標準月額との違い
社会保険料の届出を見ると「報酬月額」という言葉も出てきます。
報酬月額とは、簡単に言うと「実際の給与月額」です。
たとえば、基本給が月25万円、家族手当が月1万5千円だった場合、26万5千円が標準月額となります。
一方、標準報酬月額は「標準月額をみなし給与額に変換した月額」です。実際には、標準月額を「標準報酬月額表」にあてはめて標準報酬月額を算出します。
本当は単純な月額で標準月額を算出するわけではありません。
ここでは実際の給与額に近い額と覚えておきましょう。
標準報酬月額はどのように決まるのか
標準報酬月額は、給与の月額(標準月額)を「標準報酬月額表」にあてはめて決定します。
標準報酬月額表とは、給与の月額(標準月額)によって、どの標準報酬月額にあてはまるかランク付けしたものです。
下記の表が標準報酬月額表になります。
一番左側に1~50の数字が書いてあります。この数字を「等級」といい、給与の月額(標準月額)の金額をあてはめて等級や標準報酬月額を決定しています。
たとえば、月給が255,000円であれば「250,000円~270,000円」の範囲に収まっているため、「20等級(厚年は17等級)」、標準報酬月額は「260,000万円」となります。
つまり、月給255,000円の従業員は標準報酬月額が260,000円になり、社会保険料は「260,000円×保険料率」で計算されるということです。
社会保険料は従業員と会社で折半して負担するので、給与からは標準報酬月額に保険料率をかけた金額の半額を天引きします。
標準月額の計算と標準報酬月額の改定
ここからは、標準月額の計算方法と標準報酬月額の改定について解説します。
標準報酬月額の決定と改定は主に以下3つで行われます。
- 取得時決定
- 定時決定(算定)
- 随時改定(月変)
それぞれを詳しく解説します。
取得時決定
社会保険に加入する従業員が入社したときは、健康保険と厚生年金保険の資格取得届を作成しなければいけません。
資格取得届を作成する際は、標準月額を計算して記入する必要があります。
計算方法は日給、月給、請負など雇用形態によって様々ですが、今回は時給と月給の一般的な例を解説します。
時給の場合
式:(時給×1ヶ月の平均所定労働時間)+ 1ヵ月の通勤交通費
例
時給(フルタイム):1,000円
1ヵ月の平均所定労働時間:160時間
1ヵ月の通勤交通費:5,000円
=165,000円
標準報酬月額:170,000円
時給の場合は、時給に1ヶ月の平均所定労働時間をかけ、通勤交通費を足して計算するのが一般的です。また、時給でも残業がある場合は、平均残業時間分を足して計算しましょう。
月給の場合
式:『月給 + 1ヵ月の通勤交通費 +平均残業時間分の残業代』
例
資格給:130,000円
業績給:120,000円
通勤交通費:5,000円
残業代:20,000円
=275,000円
標準報酬月額:280,000円
月給の場合は、月給(資格給+業績給)に通勤交通費と残業代を足して計算しています。また残業代は、例えば会社平均残業時間が10時間だとすると10時間分で計算します。
残業時間などの計算方法は就業規則に則って計算するのが一般的です。今回はあくまで一例なので、社会保険の報酬に含まれるものなどを考慮して計算しましょう。
報酬に含まれているものについては東京実業健康保険組合のホームページを参考にしてください。
そのほか、詳しい報酬月額の計算方法については下記の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
定時決定(算定)
定時決定(算定)は年に1回、標準報酬月額を見直す制度です。
毎年4月~6月に支払われた給与平均をもとに標準報酬月額を決定し、9月分の保険料から改定します。そして社会保険料は原則、定時決定で決まった標準報酬月額をもとに1年間保険料が計算されます。
定時決定は、毎年7月10日までに全従業員分の報酬を計算し、算定基礎届を提出しなければいけません。
社会保険の手続きの中でも労力のいる作業になるため、時間に余裕をもって取り組むことが大切です。
算定基礎届の作成方法は下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
随時改定(月変)
随時改定(月変)とは、基本給など固定的に(定額で)支払われている賃金が大幅に増減した場合に標準報酬月額を改定するものです。
随時改定は、固定的に支払われている賃金が改定してから3ヶ月平均の標準報酬月額が現在の標準報酬月額より2等級以上変動する場合に行われます。
たとえば、10月に基本給が大幅に上がった場合は、10月・11月・12月の平均で標準報酬月額を算出し、2等級以上変動があった場合は、1月から改定します。
随時改定(月変)の詳しい計算方法は下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
まとめ
標準報酬月額とは社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)の保険料を決めるうえで使用する「みなし給与額」です。
社会保険ではみなし給与を「標準報酬月額」と呼んでおり、標準報酬月額に保険料率をかけて社会保険料を算出しています。
また、標準報酬月額は基本的に年1回改訂され、大幅に賃金が増減した場合は随時改定が行われます。
労務初心者にとっては難しい制度ですが、一つひとつ理解しながら進めていきましょう。
以上、この記事がご担当者様のお役に立てると幸いです。
社会保険や給与計算をミスした時にどう対処していいのかが事細かに書かれています。
実務経験豊富な著者の実体験をもとに書かれているので、参考になります。
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