【勤怠システム導入事例】システムの選び方と導入スケジュールを実体験で解説

 

勤怠システムの導入を検討しているのですが、何をどう選んだらいいのかわかりません。

労サポくん

そんな悩みにお答えします。

この記事でわかること
  • 勤怠システムの選び方
  • 勤怠システム導入前に確認すること
  • 勤怠システム導入スケジュール
  • 勤怠システム導入効果
システム選びは慎重にね

会社で勤怠システムの導入を検討してみたものの「何を選んだらいいのかわからない」「導入までどのくらいかかるか不安」という状態じゃありませんか?

私は過去に2回、勤怠システムの導入を担当したことがありますが、「事前に知りたかった」と思うことがいっぱいあります。

そこで今回は、私が勤怠システムを導入した経験をもとに、勤怠システムの選び方と導入までのスケジュール、そして導入した効果をご紹介します。

目次

勤怠システムの選び方

勤怠システムを選ぶポイントは4つあります。

  1. 給与システムと連携できるか
  2. 従業員全員がパソコンを持っているか
  3. カスタマイズができるかどうか
  4. 見やすくて使いやすいか

それぞれ詳しく解説します。

給与システムと連携できるか

勤怠システムと給与システムは密接に関わるシステムです。

勤怠システムで抽出したデータを給与システムに取り込めるかどうかは、運用上の最低限押さえておきたいポイントになります。

たとえば、勤怠システムからCSVファイルを抽出して、加工をしないと給与システムに取り込めない仕様であれば、その勤怠システムは選択肢から除外しましょう。

勤怠システムから「抽出したCSVをそのまま取り込む」あるいは「システム連携で自動反映する」という条件は必須です。

なぜなら、CSVファイルを加工する段階でデータ書き変わる可能性があり、最終的に従業員の給与計算を間違う可能性があるからです。

まずは勤怠システムが自社の使っている給与システムに対応しているかどうか確認をしましょう。

従業員全員がパソコンを持っているか

勤怠システム導入でネックになることが「従業員全員がパソコンをもっているかどうか」です。

全員パソコンが使える状態であれば問題はありません。

パソコンをもっていない従業員がいる場合は以下の3つの対策が必要となります。

  1. 共有パソコンを使って申請してもらう
  2. 紙の勤務表を上司または人事部でシステムに打ち込む
  3. スマホや自宅のパソコンで打ってもらう

私の経験上、完全にパソコンに触れる機会がない従業員はシステムを導入しても今までと変わらない勤務表で対応することが多いです。

ただし打刻をシステムで行ったり、スマホや自宅のパソコンで打ち込んでもらったりするのであれば、クラウド型の勤怠システムを選択した方が場所に関係なく勤怠が申請できるメリットがあります。

カスタマイズができるかどうか

勤怠システムは「カスタマイズができるシステム」と「カスタマイズできないシステム」の2通りがあります。

自社の勤怠が複雑であり、上司がこだわりの強い方であれば「カスタマイズできるシステム」を選ぶことが多くなります。

逆にそんなにこだわりがなく、できる範囲でシステムを活用するのであれば 「カスタマイズできないシステム」 を選んでも問題はありません。

私が見てきた会社では「カスタマイズできないシステム」を選んでシステムに合わせて就業規則を変えた会社もありました。

労サポくん

カスタマイズできるシステムの方が料金が高くなります。

見やすくて使いやすいか

これは完全に個人的な意見ですが、見やすくて使いやすそうなシステムを選びましょう。

勤怠システムは従業員全員が使うものです。見やすくて使いやすいシステムの方が従業員の満足度は高くなります。

たとえば、エクセルを少し使いやすくしたようなものや、いかにも安いシステムみたいなものを避けることをおすすめします。

勤怠システム導入前に確認すること

導入する勤怠システムが決まったら、打ち合わせ前に確認しておいた方が良いことを2つご紹介します。

  1. 就業規則と実態のずれ
  2. 給与計算システムの勤怠計算ロジック

それぞれ詳しく解説します。

就業規則と実態のずれ

システム会社との打ち合わせは、就業規則に沿って行っていきます。

しかし、実際に打ち合わせをしていくと就業規則と実態にギャップがあるところが必ず出るはずです。

これは違法とかそういう話ではなく「実体として今どう運用しているのか」を事前に就業規則と照らし合わせることで打ち合わせがスムーズに進むという話です。

就業規則とのギャップに気づいた場合は、後日就業規則を変更するなどの対応をするようにしましょう。

給与計算システムの勤怠計算ロジック

給与システムに何気なく打ち込んでいた勤怠データが、実は給与システム内でさらに計算されていたという場合があります。

たとえば、給与明細に労働日数を表示させるために給与システム内で「出勤日数+休日出勤日数」と計算されているなどです。

労働日数の計算がパート・アルバイトの通勤交通費の計算に使われている可能性もあるので、計算ロジックは事前に確認したうえで打ち合わせに臨んだ方が良いでしょう。

勤怠システム導入スケジュール

勤怠システムの導入スケジュールは「最低でも半年」はあった方がいいと思います。

理由は、スケジュールが以下の通り実施されるからです。

STEP
就業規則を元に打ち合わせ

システム会社と人事部で就業規則を元にすり合わせを行います。

たとえば、以下のようなルールをどう対応するかの検討です。

・振休は月内しか使えない
・代休は休日出勤が6時間以上の場合付与としている
・特別休暇は有給と無給がある
・積立休暇は有給休暇の期限を超えた分の2分の1日

など、会社ごとに独自のルールや慣習があると思います。

そのルールがシステムで対応できるかどうかの打ち合わせをするということです。

STEP
要件定義

就業規則の打ち合わせですり合わせた内容をシステムに反映していきます。

その中で「エラーの文言はどうするのか」「画面の配置はどうするのか」など細かい設定をシステム会社と人事担当者で随時打ち合わせしてシステムを作り上げていきます。

また、どうしてもシステムで対応できない場合は、人の目でチェックしたり社内でルールを作って従業員に周知したりなど、現場で対応することの洗い出しも必要です。

STEP
組織・従業員データ取り込み

勤怠システムの骨組みが出来てきたら組織データと従業員データを取り込みます。

組織データは、違和感がないのであれば給与システムや基幹システムの組織コードと名称を合わせた方が良いです。
勤怠システムを使って部門別の時間外の資料作成や、 有給休暇取得率の算出などにも使われるので、組織コードは合わせた方が後々便利になります。

従業員データは、給与システムから必要なデータを持ってくるれば大体は入れることができます。

STEP
テスト稼働

テスト稼働は実際に勤怠実績を入れてみて「時間計算が合っているか」「想定通りのエラーが出るか」などをチェックする作業です。

私が導入した時は、人事部で2ヶ月ほどテスト稼働をしていました。

STEP
平行稼働

平行稼働は、今までのやり方と新勤怠システムの両方で勤怠を入れていく作業です。事前に従業員に周知して行うようにしましょう。

なぜ平行稼働が必要なのかというと、多くの勤怠パターンでエラーチェックをするためです。

人事部は基本的に内勤であるため、特殊は働き方がどうしても出にくい部署です。

そのため、営業など外出の多い部署が勤怠をつけることで新たなエラーが発見できます。

平行稼働した際は、給与システムに取り込むデータが新旧で同じになることも確認しましょう。

ちなみに、私が導入した時は2ヶ月平行稼働を行いました。

また人数が多い会社では、まずテスト稼働を人事部で2ヶ月、平行稼働を管理部で2カ月、そして全社員で平行稼働をさらに2ヶ月と、徐々に使用する人数を広げていく方法で本稼働させた会社もありました。

STEP
本稼働

平行稼働で新旧同じ結果が出たら、いよいよ本稼働です。旧式の勤務をやめて新勤怠システムだけで稼働させます。

ここまでが勤怠システム導入スケジュールになります。テスト期間、平行稼働を含めてスケジュールを立てると最低でも半年ほしいところです。

勤怠システムを導入して感じたメリット・デメリット

ここからは、私が実際に勤怠システムを導入して感じたメリットとデメリットをご紹介します。

メリット

メリットは次の3つです。

  1. 勤怠チェック時間の削減
  2. 法改正対応の自動化
  3. 資料作成の時間削減

勤怠チェック時間の削減

毎月勤怠が確定したら勤怠に間違いがないか一人一人チェックしていませんか?
勤怠チェック作業は意外と時間が掛かりますよね。

でも勤怠システムを入れると、エラーチェックが自動的に行われるので、勤怠のチェック時間が大幅に削減できます。
とはいえ、全ての勤怠入力ミスに対応できるわけではありませんので、エラーの穴を抜けるものはチェックが必要です。

私の経験でいうと、毎月500人のチェックで労働時間が月5時間ほど減ったと思います。

法改正対応の自動化

勤務表を紙またはエクセルで作っていた会社にとって法改正は担当者を悩ます問題の一つです。

しかし勤怠システムにすることで、法改正はシステム会社の方で対応してくれるので、対応に悩む必要はなくミスもなくなります。

資料作成の時間削減

人事や総務にいると何かと勤怠関連の資料作成業務がありますよね。
「部門別の時間外管理」「有給休暇の取得日数調査」「36協定違反のチェック」などです。

勤怠システムを導入すると勤怠データを簡単に抽出できるので、資料作成の時間が削減できます。

また勤怠データを使って労働生産性の分析にも役に立つので、経営者への資料作成にも利用できるので、人事部の業務効率化が可能です。

デメリット

勤怠システムの導入にはデメリットもあります。

私が実際に導入して感じたデメリットは以下の3つです。

  1. 設定を覚えることが大変
  2. かゆい所に手が届かない
  3. コストがかかる

設定を覚えることが大変

勤怠システムは様々なことに対応ができる一方、細かい設定をしなければいけないデメリットがあります。

たとえば

  • 承認権限のルート設定
  • 36協定通知設定
  • 正社員とパートの使用項目の制限
  • 異動・昇格の部署変更・承認者変更

など、ちょっとしたことなのに設定がたくさんあって覚えられないことは多々あります。それゆえに勤怠の担当者しか設定が変更できない事態になりがちです。

勤怠システム導入の際は、設定ができる人を少なくとも2人設けることを意識しましょう。

かゆい所に手が届かない

システムだからこそかゆい所に手が届かないことが多いです。

たとえば休憩時間を取れなかった従業員がいても、システムでは自動的に休憩時間が控除される設定になっているので、労働時間を申請より1時間増やして、コメントに「休憩時間が取れなかったため」と注釈を入れて対応したりしていました。(本当はよくないですが)

つまり、紙やエクセルの勤務表だと数秒でできる処理が、システムだと一つ一つ対応を考えなければいけないのです。

コストがかかる

当たり前ですが、コストがかかります。

立ち上げの初期コストや、カスタマイズ費用、月々のランニングコストなどです。

特にカスタマイズ費用はかなり大きなものになる可能性があるので注意しましょう。
私の時はカスタマイズ費用で200万円以上使いました。

まとめ

勤怠システムの導入は時間と手間がかかる大きなイベントです。

給与システムとの連携や従業員のパソコン普及率、カスタマイズの有無など、懸念点はシステム導入前に確認してからシステムを検討するとスムーズに導入できます。

また導入当初は問い合わせも多く、必ずエラーが発生します。テスト稼働と平行稼働はなるべく長く取った方が安全に導入できるので、それらの期間を含めたスケジュールで動いていきましょう。

以上、勤怠システムの選び方と導入事例でした。
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管理人:キタ コウタロウ
社会保険労務士・Webライター
きた社労士事務所代表
給与計算や社会保険業務などの労務業務を10年経験。その後、社労士として独立。人事労務コンサルのほか、Webメディアの執筆・監修に力を入れている労務の専門家。
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