こんにちは、社労士のキタです。
通勤交通費の計算方法がわからなくて困っていませんか?
通勤経路や通勤の仕方は人それぞれ違うので、計算や管理は結構大変ですよね。
さらに住所変更や退職者の精算になるともっと複雑になっていきます。
そこで今回は、通勤交通費の計算方法と精算方法を私の経験を元に解説します。
ぜひ、参考にしてください。
通勤交通費の給与計算
給与計算で通勤交通費を支給方法は大きく分けて「定期代」と「ガソリン代」に分かれます。
定期代は、公共交通機関を利用して通勤している方、ガソリン代は自動車通勤している方です。
基本的には計算方法は就業規則や賃金規定に記載してある事項に従って支給することになりますが、修正やイレギュラーな事項は今まで担当者がやっていたやり方や、社内ルールに従って処理するのが現実です。
では、それぞれ一般的にどうやって計算しているのか詳しく解説します。
定期代(公共交通機関)
定期代は、3カ月もしくは6カ月の定期代を前月の給与で支払うことが一般的です。
たとえば、6カ月定期であれば4月~9月分の定期代は3月給与、10月~3月を9月給与で支給します。
また、フルタイムではないパートなどは「実費の往復料金×出勤日数」を支給する場合もあります。

実費をICチップ料金で払うか、切符料金で払うかは社内で検討しましょう。私が担当していた時は従業員に有利になるよう切符料金で支給していました。
ガソリン代(自動車)
自動車通勤の場合は、会社によって決め方が違います。
私が計算していた例では下記のような計算をしていました。
1kmあたりのガソリン単価÷燃費×片道距離×2×平均所定労働日数
1kmあたりのガソリン単価は地域によって異なります。東京であれば「東京 ガソリン単価 統計」と検索し「経済産業省の資源エネルギー庁」、北海道であれば「物価情報(消費者安全課)」のデータを参考にするなど、単価を会社で決定します。
燃費の算出は統計を調査するか、10kmや15kmなど会社で決めてしまうと計算がしやすいです。
たとえば以下のような計算です。
- 燃費:1リットルあたり10km
- ガソリン代:1リットルあたり140円
- 片道距離:15km
- 所定労働日数:21日
140円(ガソリン代)÷10㎞(燃費)=14円
14円×15km×2(往復)×21日=8,820円
※歴日数でける場合もあります。
このように導き出せます。
ガソリン単価や燃費は1年に1回見直すと良いでしょう。
また雪が降る地域では、夏と冬で燃費が大きく変わるので半年に1回見直す会社もあります。
住所変更・退職による通勤交通費の精算方法
住所変更や従業員の退職によって通勤交通費を精算しなければいけないことは多々あると思います。
ここからは、変更や払い戻しがあった時の計算方法をご紹介します。
定期代(公共交通機関)
定期代の場合は「払い戻し」か「区間変更」のどちらかの方法で定期代を精算します。
払い戻し
払い戻しは定期を今後使わない時に発生するものです。
払戻額は以下の計算方法で決まります。
払戻額=定期券発売額-使用済月数分の定期運賃-手数料220円
使用済月数分の定期運賃で1カ月に満たない日のは数は1カ月として計算します。
4月1日から9月30日まで有効の6カ月定期券を8月20日に払い戻す場合
払戻額=6カ月定期運賃-(3カ月定期運賃+1カ月定期運賃×2)-220円
となり、8月分を1カ月使用したものとして払い戻し金額が計算されます。



退職者に定期代を前払している場合は払い戻し額を給与でマイナス支給しましょう。
区間変更
区間変更は、定期を解約するわけではなく、行き先を変える手続きです。
手続きとしては新しい区間の定期券を買って、古い区間の定期券を払い戻す手続きを踏みます。
この場合の払い戻し額は、発売額から変更日までに経過した旬数(10日を1旬とし、1旬に満たない日のは数は1旬とします)に定期運賃の日割額を10倍した額を乗じた額と手数料220円を差し引いた残額です。※JRホームページより引用
つまり「日割りして10日単位で精算しますよ」ということです。
計算式は以下の通りです。
払戻額=定期券発売額-(使用した旬数×定期運賃の日割額×10)-手数料220円
ここまでが、定期代の精算手順です。



けっこう複雑なので、公共交通機関の問い合わせ窓口に電話で聞いた方が早かったりします。
ガソリン代(自動車)
自動車の場合は、距離変更を日割りで行うことで解決します。
前章の例を用いると以下の通りです。
9月10日に15km→10kmに変更
140円(ガソリン代)÷10㎞(燃費)=14円
14円×15km×2(往復)×10日=4,200円(旧)
14円×10km×2(往復)×11日=3,080円(新)
4,200円+3,080円=7,280円
※歴日数でける場合もあります。
このように日割りして精算をします。
変更申請が遅れて翌月精算になる時は、差額を翌月で調整しましょう。
通勤交通費Q&A
ここからは通勤交通費でよくある質問をQ&A形式でお答えします。
- 通勤交通費は欠勤控除されないのですか?
-
会社のルールにもよりますが、私の経験上2つパターンがあります。
- 日割り計算
- その月に1日でも出勤していれば全額支給
大抵の場合は①の日割り支給です。
日割りが当月給与に間に合わなかった場合は、翌月にマイナス支給で調整してください。
また長期欠勤者は払い戻し金額をマイナス支給で一旦精算します。
- 住所変更の申請を忘れていた従業員は何年さかのぼって精算できますか?
-
通勤交通費の場合は、請求時効は2年です。
しかしあまりにも大きい金額になる場合は、分割して精算するなど対応が必要です。
年末調整のときなど、最低1年に1回は従業員の住所変更を確認するようにしましょう。
- ICカードのオートチャージで通勤しているから実費を払えと言われました。
-
実費を払う必要はありません。
賃金規定で「定期代を払う」と記載されているのであれば、会社が支給する通勤交通費は定期代が上限です。
- 自動車通勤と申請している従業員が歩いて通勤していました。
-
本人に事実確認をおこなったうえで、通勤交通費の返済を求めてください。
またその行為が故意であり、多額であれば始末書の提出をもとめてもいいでしょう。
まとめ
通勤交通費の計算は住所変更や退職者が出るたびに精算や訂正があるため間違いやすい計算です。
計算方法や精算の仕方は賃金規定などを確認しながら慎重に行いましょう。
それでも「通勤交通費の精算がめんどうだ!」という方は、勤怠管理と交通費に清算が自動でできる
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無料トライアルもできるので、ぜひ一度お試しください。
以上、通勤交通費の計算方法と精算についてでした。
参考になれば幸いです。