マイナス支給とマイナス控除ってなんですか?
支給と控除で処理しちゃダメなんですか?
そんな疑問にお答えします。
給与計算をはじめたばかりの方の中には、「なぜマイナス支給やマイナス控除を行うのか」がわからない方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、マイナス支給とマイナス控除を行う理由をわかりやすく解説します。
今までなんとなくマイナス支給・マイナス控除で処理していた、という方はぜひご覧ください。
マイナス支給とは
給与計算において、「マイナス支給」とは支給項目にマイナスで入れることをいいます。
マイナス支給をすることによって、所得税や雇用保険料の対象となる賃金を減額する効果があります。
通常の控除の違い
通常の控除は、その額を引いても所得税や雇用保険料の対象となる賃金は変わりません。
たとえば、総支給額が250,000円で社宅使用料が50,000円だった場合、差引支給額が200,000円になります。
このケースでは、所得税と雇用保険料の計算の基となる賃金は、総支給額である「250,000円」です。
もし、雇用保険料率が「6/1000」だった場合は、雇用保険料が「1,500円」になるということです。
一方、マイナス支給は、総支給額から直接引かれるため、所得税や雇用保険料の基準となる賃金が減ります。
たとえば、基本給250,000円から住宅手当を「-50,000円」マイナス支給した場合、総支給額が200,000円になります。
もし、雇用保険料率が「6/1000」だった場合は、雇用保険料が「1,200円」になるため、通常の控除よりも少なくなるということです。
正式には所得税の対象となるのは社会保険料控除後の課税対象額ですが、わかりやすくするために総支給額としています。
マイナス支給を行うケース
マイナス支給を行うケースは以下のような例が考えられます。
- 住所変更で通勤交通費を精算した結果、過払いが発生してるため次月の給与で精算するとき
- 親族が扶養から外れたことを申告していなかった従業員に対し、家族手当(扶養手当)を遡って徴収するとき
- 急な引越しで住宅手当の調整が間に合わず、次月の給与で精算するとき
つまり、支給しすぎた分を遡って徴収するケースで、マイナス支給を行います。
マイナス控除とは
マイナス控除とは控除項目にマイナスを入れることをいいます。
控除項目をマイナスにすることで、所得税や雇用保険料の対象となる賃金にすることなく支給することができます。
通常の支給との違い
通常の支給は、支給額に応じて所得税や雇用保険料が増加します。
たとえば、基本給が200,000円に加えて住宅手当を50,000円支給すれば、250,000円が所得税と雇用保険料の計算の基となるということです。
一方で、マイナス控除にすれば「支給」ではないため、所得税と雇用保険料は増えません。
たとえば、基本給200,000円の従業員に社宅使用料50,000円をマイナス控除した場合、この50,000円に所得税と雇用保険料はかかりません。
そのため、200,000円が所得税と雇用保険料の計算の基となります。
マイナス控除を行うケース
マイナス支給を行うケースは以下のような例が考えられます。
- 年末調整による所得税の還付
- 社会保険料の計算ミスによる調整
- 労働組合費の誤徴収による調整
つまり、控除しすぎた分を返金するときにマイナス控除を行います。
よくある間違い
よくある間違いとして挙げられるのは、過払いした分を「その他控除」で精算するケースです。
「払いすぎたから、とりあえず『その他控除』で精算しよう」という処理は、過払いされている従業員から見ると所得税と雇用保険料が余計に徴収されたままになってしまいます。
そのため、項目ごとで「マイナス支給」にするか「控除」にするか、「マイナス控除」にするか「支給」にするかを判断する必要があります。
まとめ
「マイナス支給」と「マイナス控除」は所得税と雇用保険料の計算に影響する項目です。
「とりあえず『その他控除』に入れる」というような処理は給与計算ミスに繋がりますので、正しい処理方法を行いましょう。
以上、担当者様の参考になれば幸いです。
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