
養育期間標準報酬月額特例申出書の書き方がわかりません。
記入例と必要書類を教えてください。



そんな疑問にお答えします。
養育期間標準報酬月額特例申出書(以下:養育特例申出書)ってなじみがないですよね。
なんだかよくわからないけど提出しなきゃいけないみたいと思ってる方は多いんじゃないでしょうか。
今回は、「養育特例って何?」「どうやって書くの?」と悩んでるあなたにわかりやすく解説していきます。
養育特例とは
養育特例とは
『育休明けで標準報酬月額が下がった人の年金が下がらないようにする特例』です。
はい、まだわかりづらいですよね。
もうちょっと詳しく解説します。
育休が終わって仕事復帰すると、時短になりますよね。
時短になると、月額変更(随時改定)が行われて標準報酬が下がることになると思います。
厚生年金は過去の標準報酬額で年金額が決まるので、標準報酬が下がるということは、「将来もらえる年金が下がる」ことになります。
そうなると「子供を育てるために時短しているのに将来もらえる年金が下がるのは不公平だ!」となりますよね。
そこで養育特例です。
養育特例申出書を提出することで、子が3歳になるまでの期間、時短して下がった標準報酬月額が下がらなかったものとして年金を計算してくれるんです。
図にあらわすと次のようになります。


赤枠の部分が養育特例で補填される部分です。
実際の保険料は時短で下がった保険料で払いますが、年金をもらう時の計算は、下がる前の「従前の標準報酬月額」で計算されます。



実務では「育休月変届」と「養育特例申出書」はセットだと思ってください。
でも、養育特例申出書は添付書類の取得に時間がかかるので、育休月変届を先に提出することが多いと思います。
養育特例の記入例
では次に養育特例申出書の記入例を解説していきます。
養育特例申出書は下記からダウンロードできます。
・厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届(PDF 503KB)
・厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届(エクセル 168KB)
・厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届(記入例)(PDF 744KB)
では全体の記入例を見て行きましょう。


名前、生年月日、基礎年金番号などは記入例をご覧になればわかると思いますので、「A申出」欄と「B終了」欄を解説していきます。


⑧過去の申出の確認
⑨事業所の確認
申請する子について初めて養育特例申出書を提出するのか、初めてではないのかという質問です。
なぜ、このようなことを聞いてくるのかというと、3歳未満の子を育てている従業員が転職して違う会社に移った場合、転職先でもう一度養育特例を提出することになるからです。
つまり、育休から復帰して同じ職場で働いているのであれば⑧、⑨ともに「はい」になります。


⑩当該月に勤務していた事業所
ここは3歳未満の子を育てている従業員が転職してきた場合に書く欄です。
転職前に勤務していた事業所名と住所を書きます。
育休から復帰して同じ職場で働いているのであれば空欄でOK。
大抵の従業員はここが空欄になると思います。


⑪養育開始年月日
ここは単純に「子供の生年月日」です。
⑫養育特例開始年月日
多くの方は、「仕事復帰した日」です。
つまり「育児休業が終了した日の翌日」になります。
また、3歳未満の子をお持ちの方で、転職した方は「取得年月日」、申し出た子以外の子の適用が終了した場合は終了日の翌日になります。


「B終了」欄は、申出に係る子を養育しなくなった場合、または子が亡くなった場合に記入する箇所です。
申出に係る子を養育しなくなった場合とは、
「離婚して親権がなくなった」「養子に出した」などのことをいいます。
また終了でも下記の要件は終了届の提出は必要はありません。
終了の届出は必要ない
- 申出した子が3歳になったとき
- 退職等により、申出者が厚生年金保険の被保険者資格を喪失したとき
- 申出した子以外の子について養育特例措置をうけるとき
- 申出者が産前産後休業または育児休業等を開始したとき
なので「B終了」欄を記入する機会はほぼないかもしれません。
以上が記入例の解説でした。続いては添付書類について解説します。



ちなみに、従業員本人の署名(または押印)は備考欄に「届出意思確認済み」と記載することで省略することができます。
電子申請の場合は下記の委任状を添付することで署名の代わりになります。
養育特例の添付書類
養育特例申出書は、申出書だけではなく添付書類が必要です。
必要な添付書類は下記の通り。
- 戸籍謄(抄)本、または戸籍記載事項証明書
(申出者と養育する子の身分関係及び子の生年月日を証明できるもの) - 住民票のコピー
(申出者と養育する子が同居していることを確認できるもの)
※提出日からさかのぼって90日以内に発行されたもの
この2点が必要です。
※子どものマイナンバーを記入すれば住民票は必要ありませんが、代わりにマイナンバーカードのコピーが必要になります。
市区町村で手続きが必要な書類であるため、すぐに申請するとこは難しく、従業員本人が時間を作って取ってきてもらわなければなりません。
従業員には制度の概要を十分説明して、証明書を取ってきてもらいましょう。
実務では育児月変届と一緒に作成することが多い養育特例申出書ですが、育児月変を先に提出して、養育特例は必要書類が全部そろってから申請になります。



電子申請の場合は、原本ではなくPDFで大丈夫です。
養育特例のよくある質問
最後に養育特例に関するよくある質問をQ&A形式でお答えしていきます。
- 養育特例申出書はいつまでに提出しなければいけないですか?
-
いつまでという期限はありません。提出から2年さかのぼって適用されますので、慌てなくて大丈夫です。でも放置しておくと忘れてしまうので、育児月変が行われてからなるべく早く提出するのがよいでしょう。
- 第2子の手続きはどうすればいいですか?
-
第2子の場合でも同じように提出してください。
もし第2子の養育期間でも第1子が3歳未満の場合は、第1子の従前標準報酬月額がみなされることになります。
- 育児休業していないお父さんも養育特例の適用を受けることができますか?
-
受けれます。養育特例に性別要件はないので男性でも可能です。
さらに育児休業をしていなくても、3歳未満の子供を養育していることによって標準報酬月額が下がった場合は、養育特例を受けることができます。 - 育児休業から復帰しましたが標準報酬が下がりませんでした。養育特例の提出は必要ありますか?
-
下がらなかった場合は必要ありません。
しかし、復帰当初は下がらなくても、将来下がる可能性はあるので提出しておいた方が無難です。
- 従前の標準報酬はいつのものが基準となりますか?
-
子の出生日が属する月の前月の標準報酬月額です。
- 子育てのため実家に帰省しており、住民票を一時的に移していました。必要書類の住民票は現在のもので十分ですか?
-
養育特例は同居要件があるので、子供が誕生してから同居している証明が必要です。
住民票を一時的に移していた場合は、「現在の住民票」と「前の住所の除票」の2点が必要になります。
※除票とは引越しなどで抹消された住民票を「住民票の除票」といいます。
まとめ
養育特例はわかりづらいので、会社の担当者さんも悩ます書類の一つではないでしょうか。
とりあえず『育休明けで標準報酬月額が下がった人の年金が下がらないようにする特例』ということだけ覚えておいてください。
書類の提出するタイミングは育児月変届と同じ、つまり育児休業から復帰してから3ヵ月が経過してからです。
また養育特例には役所で証明書の取得が必要です。従業員にきちんと制度の説明したうえ書類の取得をお願いしましょう。
産休・育休の流れについては下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。


以上、養育特例の概要・記入例・添付書類の解説でした。この記事がお役に立てると幸いです。