【傷病手当金の改正】2022年1月からの変更点と既存の受給者への対応

2022年1月から傷病手当金が改正さました。

変更内容は以下の通りです。

  • 現行:支給開始日から1年6ヶ月経過するまで支給
  • 改正:支給期間が通算して1年6ヶ月まで支給

このように、支給期間が通算1年6ヶ月になるまで支給されることになります。休職と復帰を繰り返す従業員にとってはありがたい改正ですね。

「じゃあ今受給している従業員はどうなるの?」って思いますよね。

そこで今回は、2022年1月に改正される傷病手当金の概要と既存の受給者への対応を解説します。

この記事でわかること
  • 2022年1月傷病手当金の改正点
  • 2022年1月より前に傷病手当金を受給している人の対応
休職と復帰を繰り返す人が損しなくなるね
目次

そもそも傷病手当金とは?

そもそも傷病手当金とは、健康保険から支給される手当金のひとつで、業務外の病気やケガのために働くことができない期間、従業員の生活のために支給されるものです。

支給要件は次の通り。

  • 業務外で起こった病気やケガで休業していること
  • 仕事に就くことができないこと(医師が証明)
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  • 休業した期間について給与の支払いがないこと
労サポくん

業務中の病気やケガは労災保険の休業補償となります

傷病手当金の改正点

2022年1月に改正される内容は以下の通りです。

  • 現行:支給開始日から1年6ヶ月経過するまで支給
  • 改正:支給期間が通算して1年6ヶ月まで支給

現行(2021年12月まで)は休職・復帰を繰り返していても、支給開始日から1年6ヶ月以降は傷病手当金が支給されませんでした。

しかし2022年1月からは、欠勤日が通算して1年6ヶ月になるまで支給されます。

出典:厚生労働省

がん患者などは出勤・欠勤を繰り返すことが多く、回復まで時間がかかることから、今回の改正で不平等がなくなります。

改正前に傷病手当金を受給している従業員への対応

現場で気になるのは「改正前から傷病手当金をもらっている従業員への対応はどうなるのか」ということだと思います。

結論は「2022年1月1日時点で支給開始日から1年6ヶ月を経過していないのであれば過去に遡って通算される」です。

たとえば

  • 2021年10月1日~10月31日:欠勤
  • 2021年11月1日~11月30日:出勤
  • 2021年12月1日~12月31日:欠勤

となった場合、現行は3ヶ月ですが2022年1月からは過去に遡って2ヶ月とするということ。

つまり2022年からは残り1年4ヶ月分が傷病手当金の対象となるということです。

ただし、2021年12月31日までに1年6ヶ月を経過した人は対象外です。
簡単に言うと、2020年7月1日以前から受給している人は通算の対象外となります。

細かい日数計算の仕方はまだ情報が出ていないので、わかり次第更新します。

また申請書のフォーマットも変わる可能性もあるので、2022年1月からの傷病手当金申請には注意しておきましょう。

2022年1月改正傷病手当金Q&A

ここからは、厚生労働省から公表されているQ&Aを抜粋してご紹介します。

今回の法改正により、傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関して、「その支給を始めた日から通算して1年6月間」となるが、1年6月間とは何日間ですか?

初回の申請から3日間の待期期間を経て、支給を始める4日目より、暦に従って1年6月間の計算を行い、傷病手当金の支給期間を確定します。

労サポくん

起算日が待期期間を経て支給し始める日から1年6ヶ月であることに注意しましょう。

以下のケースにおいて傷病手当金の申請がなされた場合、傷病手当金の支給期間及び支給満了日はどうなりますか?
【例】
①令和4年3月1日~4月10日 労務不能(支給期間:38日間)
②令和4年4月11日~4月20日 労務不能(支給期間:10日間)
③令和4年5月11日~6月10日 労務不能(支給期間:31日間)

上記のケースにおいては、令和4年3月1日から3日までの3日間の待期期間を経て、令和4年3月4日が傷病手当金の支給開始日となり、支給期間は令和5年9月3日までの549日間となります。
①の支給期間(38日間)後、残りの支給日数は511日
②の支給期間(10日間)後、残りの支給日数は501日
③の支給期間(31日間)後、残りの支給日数は470日

なお、今回の法改正により、残りの支給日数が0日となる日が支給満了日となります。例えば、③の期間が終了した翌日(令和4年6月11日)より
・ 連続して470日間労務不能であった場合は令和5年9月23日、
・ 支給期間の合間に合計して40日間就労した場合は令和5年11月2日
がそれぞれ支給満了日となります。

出典:厚生労働省
改正法の施行日前に支給を開始した傷病手当金について、改正前の規定による支給満了日が施行日後に到来する場合の取扱いはどうなりますか?

令和2年7月2日以後に支給を始めた傷病手当金については、施行日の前日(令和3年12月31日)において支給を始めた日から起算して1年6月を経過していないため、改正後の規定が適用され、支給期間が通算されます。

【例1】支給を始めた日が令和2年7月1日である場合
令和3年12月31日で支給期間が満了するため、改正前の規定が適用されます。

【例2】支給を始めた日が令和2年7月2日で、令和2年7月2日~31日(30 日間)の傷病手当金が支給されている場合
令和3年12月31日において、支給を始めた日から起算して1年6月を経過していないため、改正後の規定が適用されます。

具体的には、令和2年7月2日から令和4年1月1日までの549日であり、令和4年1月1日時点で、既に30日分の傷病手当金が支給されているため、令和4年1月1日時点の残りの支給日数は519日となります。

資格喪失後の継続給付の取扱いはどうなりますか?

「継続して」受けるものとされているため、従来どおり、被保険者として受けることができるはずであった期間において、継続して同一の保険者から給付を受けることができます。
ただし、一時的に労務可能となった場合には、治癒しているか否かを問わず、同一の疾病等により再び労務不能となっても傷病手当金の支給は行われません。

傷病手当金の支給額の算定方法について変更ありますか?

今回の改正では、傷病手当金の支給額の算定方法について変更はありません。従来どおり傷病手当金の支給開始時に算定した支給額を支給します。

傷病手当金の支給申請書について、改正法の施行に伴い変更する必要はありますか?

新たに同一の疾病又は負傷に対する労災の休業補償給付などの支給状況について記載することを求める予定であるため、様式に確認欄を設ける必要があります。

なお、改正法の施行前に使用していた様式に確認欄がない場合は、施行後の内容に即した形で、当分の間、取り繕って使用していただきたいです。

※参考「厚生労働省:健康保険法及び船員保険法改正内容の一部に関するQ&Aの送付について

以上、参考になれば幸いです。

労務担当者におすすめの書籍【PR】

社会保険や給与計算をミスした時にどう対処していいのかが事細かに書かれています。
実務経験豊富な著者の実体験をもとに書かれているので、参考になります。

こちらも宮武さんの著書です。社会保険の初心者向けに優しく解説されており、やるべき手続きが網羅されています。
「社会保険の手続き自体が何をどうしていいのかわからない」という方にはおすすすめです。
※様式は最新のものでない場合があります。

労務の仕事はExcelとWordは必ず使います。「とりあえず労務で使うことだけ教えてほしい」という方にはおすすめです。
「時給×労働時間の計算」有給休暇取得日数の年度集計」「就業規則の作成時のWord設定」など実務で役立つExcel・Word操作が習得できます。

就業規則の実務本です。厚生労働省が公表しているモデル就業規則の問題点を指摘し、判例に基づいた就業規則の本質が解説されています。労使トラブルを防止する就業規則を作成したい方は、ぜひお手に取ってください。

おすすめの事務用品【PR】

「時間計算」や「時給計算」ができる電卓の定番です。
給与計算業務を担当している方は持っていて損はしないでしょう。

封筒をとじる時にのりを使ってませんか?のりは手にくっつくし、ムラがあるとうまくくっつかないですよね。
そんな悩みを解消するのがこちらのテープのりです。
スッと線を引くだけで簡単に封筒を閉じることができるので、業務効率化ができます。

封筒を開ける時にカッターやハサミを使っていませんか?カッターは刃をしまい忘れると危ないし、ハサミはまっすぐ切れませんよね。
そんなとき便利なのがこのオートレターオープナーです。
封筒の開けたいところを滑らすだけできれいに封筒を開けることができます。手を切る心配もないので安心して使えます。

電話メモを付箋で書いている人におすすめのグッツです。
このスタンプは付箋に伝言メモを押せるという便利スタンプ。スタンプを押せば必要最低限のことしか書かなくていいので業務の効率化ができます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
管理人:キタ コウタロウ
社会保険労務士・Webライター
きた社労士事務所代表
給与計算や社会保険業務などの労務業務を10年経験。その後、社労士として独立。人事労務コンサルのほか、Webメディアの執筆・監修に力を入れている労務の専門家。
目次