従業員が入社した時の標準報酬月額の計算方法がわかりません。
そんな悩みにお答えします。
健康保険・厚生年金保険の資格取得届の作成時には、取得時の報酬額を記入する箇所があります。
これを「取得時報酬」といい、従業員が入社した時点で予定される月額賃金を算出しなければいけません。
そこで今回は、労務初心者にもわかりやすく、給与形態別に取得時報酬の算出方法を解説します。
給与形態別|入社時の報酬月額(取得時報酬)の計算方法
入社時の報酬月額を算出する方法は雇用形態によって異なります。
ここでは、下記の5つの計算方法を解説します。
- 月給
- 時給
- 日給
- 日給月給
- 出来高・請負給
月給
月給の計算方法は以下の賃金を基に報酬月額を算出します。
- 基本給
- 各種手当
- 通勤手当
- 時間外手当
例を見ていきましょう。
- 資格給:100,000円
- 業績給:150,000円
- 家族手当:10,000円
- 通勤手当:5,000円
- 時間外手当:35,000円(20時間分)
上記の場合「300,000円」が報酬月額となります。
基本給は、毎月定額で払われる賃金の事をいい、この例では「資格給と業績給(基本給)」、「家族手当(扶養手当)」が基本給として扱われます。
また、通勤手当は1ヵ月の通勤手当を割り出して計算します。
たとえば、定期代を6ヵ月分支給する場合は、6で割った金額が報酬月額に含まれるということです。
時間外手当は、会社の残業時間の平均です。上記の例であれば、平均時間が20時間と想定して、基本給をもとに時間外手当を計算し、報酬に入れています。
残業時間は会社の平均残業時間、もしくは配属される部署の平均残業時間を使って計算するのが一般的です。
出典:厚生労働省「届出にあたって「もれ」や「誤り」が多い事例」
時給
時給の取得時報酬は「時給額×資格取得時に見込まれている月間労働時間」で決定します。
例を見ていきましょう。
- 時給:1,000円
- 1日の労働時間:6時間
- 通勤交通費(1ヵ月):5,000円
- 労働日数:週3日
上記の場合、「6,000円(1,000円×6時間)×12日(月の平均労働日数)+5,000円=77,000円」と計算され、報酬月額は「77,000円」となります。
なお、法律では「資格を取得した月の前1か月間に当該事業所で、同様の業務に従事し、かつ同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額」としているため、必ずしも上記の例でなければいけないとういわけではありません。
会社によっては、労働日数を「年間労働日数÷12」で算出したり、就業規則で定められている平均所定労働日数で算出する場合もあります。
フルタイムの場合は、出勤日数に平均所定労働日数を使う場合が多いです。
出典:日本年金機構「資格取得時の決定」
日給
日給の取得時報酬の計算は「日給額×資格取得時に見込まれている月間出勤日数」です。
例えば、日額10,000円で年間平均15日働く予定の従業員は、150,000円が報酬月額となります。
また、時間外労働や通勤手当の支給がある場合は、1日単位に割ったうえで日給に加え、平均労働日数をかけて算出が必要です。
なお、法律では時給と同じく「資格を取得した月の前1か月間に当該事業所で、同様の業務に従事し、かつ同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額」としているため、実態に沿った計算をしましょう。
出典:日本年金機構「資格取得時の決定」
日給月給
ここでいう日給月給とは、1日の日給が決まっており、月単位で給与が支払われる給与形態をいいます。運送業や建設業でみられる給与形態です。
例を見ていきましょう。
- 日給:14,000円
- 週5日勤務
上記の場合「(日給×5日÷7日)×30日」で計算します。
14,000円×5日×7=10,000円
10,000円×30日 =300,000円
この場合、300,000円が標準月額となります。
なお、通勤手当や時間外手当が見込まれる場合は、その分も含めます。
月給から欠勤を控除する給与形態も「日給月給」と呼ばれています。ここでは、1日を計算単位として給料を固定して支払うパターンを解説していますので、誤解のないようお願いします。
出典:日本年金機構「資格取得時の決定」
出来高・請負給
出来高・請負給の算定は、その事業所またはその地方で前月に同じような業務に従事し、同じような報酬を受けた人の報酬の平均額とされています。
「人によって増減がありすぎてわからない」という場合は、その従業員の出来高・請負給の見込み額で問題ありません。
出典:日本年金機構「資格取得時の決定」
取得時の報酬月額を訂正する場合
資格取得届を届出した後に報酬の間違いに気がついた時は下記のように訂正します。
- 資格取得届の標題に、「訂正届」と赤字で書く
- 正しい報酬額を黒字で記入し、誤っていた報酬額を赤字で記入する
- 備考欄に、訂正理由を記入する
記入例
このように訂正届を書いて健康保険組合または日本年金機構(広域事務センター)に届出します。
賃金を証明する書類の提出を求められる場合がありますので、健康保険組合や日本年金機構の指示に従いましょう。
まとめ
従業員の入社した時の標準月額の算出方法は雇用形態ごとに異なります。
社会保険料に影響する重要な計算になるため、適切な計算方法で算出しましょう。
以上、担当者様のお役に立てれば幸いです。
社会保険や給与計算をミスした時にどう対処していいのかが事細かに書かれています。
実務経験豊富な著者の実体験をもとに書かれているので、参考になります。
こちらも宮武さんの著書です。社会保険の初心者向けに優しく解説されており、やるべき手続きが網羅されています。
「社会保険の手続き自体が何をどうしていいのかわからない」という方にはおすすすめです。
※様式は最新のものでない場合があります。
労務の仕事はExcelとWordは必ず使います。「とりあえず労務で使うことだけ教えてほしい」という方にはおすすめです。
「時給×労働時間の計算」有給休暇取得日数の年度集計」「就業規則の作成時のWord設定」など実務で役立つExcel・Word操作が習得できます。
就業規則の実務本です。厚生労働省が公表しているモデル就業規則の問題点を指摘し、判例に基づいた就業規則の本質が解説されています。労使トラブルを防止する就業規則を作成したい方は、ぜひお手に取ってください。
「時間計算」や「時給計算」ができる電卓の定番です。
給与計算業務を担当している方は持っていて損はしないでしょう。
封筒をとじる時にのりを使ってませんか?のりは手にくっつくし、ムラがあるとうまくくっつかないですよね。
そんな悩みを解消するのがこちらのテープのりです。
スッと線を引くだけで簡単に封筒を閉じることができるので、業務効率化ができます。
封筒を開ける時にカッターやハサミを使っていませんか?カッターは刃をしまい忘れると危ないし、ハサミはまっすぐ切れませんよね。
そんなとき便利なのがこのオートレターオープナーです。
封筒の開けたいところを滑らすだけできれいに封筒を開けることができます。手を切る心配もないので安心して使えます。
電話メモを付箋で書いている人におすすめのグッツです。
このスタンプは付箋に伝言メモを押せるという便利スタンプ。スタンプを押せば必要最低限のことしか書かなくていいので業務の効率化ができます。