育児休業終了時月変について詳しく教えてくれませんか?
そんな疑問にお答えします。
育児休業終了時月変(以後:育休月変)と通常の月変の違いがわからないと悩んでいませんか?
また、「給与が翌月払い場合は?」「給与が上がったら?」「男性の場合はどうなるの?」そんな疑問も出てくると思います。
そこで今回は、育児休業終了時月変の内容と、現場で発生するイレギュラー案件について詳しく解説します。
育児休業終了時月変とは
育児休業終了時月変とは「育児休業から明けた従業員だけができる特別な随時改定(月変)」です。
具体的には以下のとおりです。
育児休業終了時月変とは
- 育児休業から復帰した従業員が
- 復帰した月から4カ月目に
- 1等級でも変化したら
- 標準報酬月額を改定する
条件に該当する場合は、「育児休業等終了時報酬月額変更届」を年金事務所と健保組合に提出することで等級は変わります。(協会けんぽに加入している場合は年金事務所のみ)
育児休業から復帰した月を含めて3ヶ月間の賃金をもとに、4ヶ月目から社会保険の月額報酬を改定します。
通常の月変との違いは下記の通りです。
月変(随時改定) | 育休月変 | |
---|---|---|
固定的賃金の変動 | 必要 | 不要 |
支払基礎日数 | 3ヶ月すべて17日以上 | 3ヶ月のうち少なくとも 1ヶ月が 17 日以上 |
等級差 | 2等級以上 | 1 等級以上 |
本人へ確認 | 不要 | 必要(チェックを入れればOK) |
添付書類 | なし | なし(電子申請のみ委任状が必要) |
育休月変は、基本給などの固定的賃金が変わらなくても、時短になれば高確率で育休月変の対象になるということです。
注意点として、お使いの給与システムによっては、自動的に育休月変者を抽出できない場合があります。
個別にスケジュール表を作り、いつ「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出するか覚えておくことが必要です。
では次に、育休月変で担当者が悩むポイントについて解説していきます。
育児休業終了時月変で悩むポイント3つ
ここからは、育児休業等終了時報酬月額変更届(以下:育休月変届)を作成するうえで担当者が迷うポイントを3つ解説します。
- 翌月払いの対応
- 給与が上がった場合
- 男性の適用
それぞれを詳しく解説します。
1.翌月払いの対応
会社では下記のように給与処理していませんか?
- 復帰した翌月に給与が払われている
- 欠勤控除(時短分)と残業代が翌月支給・控除される
結論は「基本的にそのままでいい」です。対象月に戻す必要はありません。
例を見ていきましょう。
育休復帰:7月15日
給与支給:末締め・翌月25日払い
給与:200,000円
7月:基礎日数0日・0円
8月:基礎日数15日・100,000円(日割り)
9月:基礎日数30日・200,000円
となり、9月のみで10月に育児月変が適用されます。(7月・8月は17日未満のため除外)
育休復帰:7月15日
給与支給:末締め・当月25日払い
給与:200,000円
時短控除:30,000円(翌月控除)
7月:基礎日数15日・100,000円(日割り)
8月:基礎日数31日・170,000円(200,000円-30,000円)
9月:基礎日数30日・170,000円(200,000円-30,000円)
となり、実際に時短をしたのが7月からでも、8月に時短分を控除しているのであれば8月分として育休月変届を作成します。
また、7月は17日未満のため平均には含めず、8月・9月で月額報酬を計算します。
※残業代が翌月支給の場合も同じく支払日ベースです。
つまり、支払日が何月だったかで賃金が決まります。
たとえば、7月の残業代が8月に支払われた場合は、8月の賃金として申請するということです。
ただし、イレギュラーな処理があった場合は、支払ベースではなくなる場合があるので、年金事務所に問い合わせて対応した方がよいでしょう。
計算例では、わかりやすく基礎日数、支給額ともに2分の1で算出しました。実際は就業規則に則った計算で算出しましょう。
詳しい算出方法は、算定基礎届と同じです。下記の記事で基礎日数や賃金について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
2.給与が上がった場合
育児月変は、基本的に時短で働く従業員が、1等級でも変化した場合に月変することを想定した書類です。
しかし、まれに給与が上がる時があります。
給与が上がった時の対応としては「提出することができる」です。つまり上げることもできます。
というのも、育児月変は義務ではありません。あくまで「本人の申出によって改定するもの」です。
そのため、会社としては、育休月変届を出さないことも可能ということです。標準報酬月額を上げることで、健康保険の給付額を増やしたり、将来の年金を増やすこともできます。
よく検討したうえで、提出するかしないかを決めていただく必要があります。
3.男性の適用
前提として、男性も育児休業の取得が可能です。つまり男性も育休月変届を提出することで、標準報酬月額を改定することができます。
もし、男性が育休月変の条件を満たす場合は、育休月変届を提出することも考えておきましょう。
まとめ
育休月変は育児休業復帰日から4ヶ月目に社会保険の改定ができる制度です。これは男性でも可能になります。
添付書類は必要ありませんが、電子申請の場合は委任状が必要です。(委任状に捺印はいりません)
また、育休月変後に標準報酬が下がった場合は「養育期間標準報酬月額特例申出書」の作成も必要です。
「養育期間標準報酬月額特例申出書」については下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
以上、ご担当者様の参考になれば幸いです。
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