
管理職も深夜割増が適用されるんですか?



そんな疑問にお答えします。
こんにちは、社労士のキタです。
よく「管理職は勤怠管理が必要がない」と思っている方も多いのですが、そんなことはなりません。
なぜなら、管理職も深夜割増を支払う義務があるからです。
この記事では管理職の深夜割増の計算方法と、今まで払っていなかった場合の対処法を解説します。
そもそも管理職とは
管理職とは、法律で言うと「管理監督者」といわれる地位で「経営者と一体の立場」と定義されています。
つまり「経営者と変わらないから残業代はいらないよね」となるのです。
しかし、ほとんどの企業の管理職は「課長や部長などマネジメントする立場になる=残業代が出ない」と区分されており、法律に沿っているかはグレーなところ。
そして勘違いが多いのが「管理職=まったく残業代がない」と思っている企業です。
結論、これは間違っています。
なぜなら、管理職も「深夜割増」を払わないといけないからです。
そもそも深夜割増とは
深夜割増とは「22時から翌5時の間に働いた場合に発生する割増賃金」です。(労働基準法 第37条 第4項)
ちなみに割増賃金とは、通常の賃金に上乗せわれて支払われる賃金をいいます。
深夜割増は1時間あたり25%の賃金を上乗せして支払う必要があります。
例えば、従業員の給料が時給換算2,000円だった場合、1時間あたり500円を払う必要があるということです。
管理職も深夜割増を払わないといけない理由
管理職も深夜割増を払わないといけない理由は労働基準法に基づいているからです。
(労働時間等に関する規定の適用除外)
労働基準法第41条
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号に該当する労働者については適用しない。
(1)別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
(2)事業の種類に関わらず監督若しくは管理の地位のある者又は機密の事務を取り扱う者
(3)監督又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
簡単に言うと「管理職は労働時間という概念がありませんよ」と書いてあります。
用語の詳細は下記の通り。
・労働時間:1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならない(32条)
引用:残業代請求弁護士ガイド
・休憩:1日6時間を超える場合、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければならない(34条)
・休日:毎週少なくとも1日の休日(法定休日)を与えなければならない(35条)
・割増賃金:32条の法定労働時間を超え、または35条の法定休日に労働させた場合は、所定の割増賃金を支払わなければならない
なんとなくお察しいただけたと思いますが、管理職に「深夜割増を適用しない」と、どこにも書いていないのです。
つまり、管理職も深夜割増の対象となるということです。
管理職の深夜割増の計算方法
管理職の深夜割増の計算方法は「時給換算の賃金×深夜時間×0.25」です。
基本給の中には、役付手当なども含まれます。
割増賃金から除外される手当以外は深夜割増の対象となりますので、詳しくは下記の記事をご覧ください。


計算例は以下の通り。
資格給:200,000円
業績給:230,000円
役付手当:20,000円
平均所定労働時間:160時間
深夜時間:5時間/月
例
(450,000円÷160時間)×5時間×0.25=3,516円
※就業規則で「基本給÷平均所定労働時間」で計算する場合
このように管理職も深夜割増を計算して、給与で支払う必要があります。
今まで深夜割増を払っていなかった場合
ここまでで「そもそも管理職は勤怠管理していないから深夜時間がわからない」と思った方もいらっしゃると思います。
前提として、管理職だからといって勤怠管理をしなくていいわけではありません。管理職の労働時間の把握は義務にもなっています。
>>厚生労働省リーフレット(11ページ目下段)
管理職(課長や部長など)の勤怠をつけていない場合は、本人に説明のうえ今すぐ勤怠をつけるようにしましょう。
もし、過去の勤怠が把握可能な場合は、遡って深夜割増分の賃金を支払うことも検討しましょう。
未払賃金の時効は2年(2020年4月1日以降の発生賃金は3年)です。
まとめ
管理職にも割増賃金が適用されます。払っていない場合は未払賃金が発生していますので注意が必要です。
また、管理職の労働時間の把握は2019年から義務化けられています。労働時間の把握は社員の健康管理として重要な事項です。
もし管理職の勤怠管理をしていない場合は、把握するようにしましょう。
以上、お役に立てると幸いです。