割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当とは?【社労士が解説】

こんにちは、社労士のキタです。

従業員の労働時間が法定労働時間を超えた場合は「割増賃金の基礎となる賃金」に割増率をかけて時間外手当を払うことになっていますよね。

そして「割増賃金の基礎となる賃金」の中には「賃金から除外できる手当」が法律で定められています。

もし知らずに賃金に含める手当を除外していたり、除外する手当を含めて計算していると、賃金の過払い・未払いが発生する可能性も。

実務担当者は正しく理解していないといけませんよね。

そこで今回は「割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当」を具体例を交えながら解説します。

割増賃金の基礎となる賃金を知らない方は、ぜひご覧ください。

この記事でわかること
  • 割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当
  • 除外できる手当の具体例
  • 割増賃金の基礎となる賃金の基準
実務担当者は知っておこう
目次

割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当

早速結論ですが、下記のものが割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当です。(労働基準法第37条第5項)

  1. 家族手当(扶養手当)
  2. 通勤手当
  3. 別居手当(単身赴任手当)
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金

ただし、除外できる手当の中でも割増賃金の基礎となる賃金になる場合があるので、注意が必要です。

具体例を交えながら解説していきます。

①家族手当(扶養手当)

家族手当(扶養手当)は、配偶者や子供などを扶養している従業員に対して、扶養の人数に応じて支給する手当です。

除外できる例

扶養家族がいる従業員に対して、人数に応じて支給するもの

例)
扶養家族1人につき10,000円を支給。3人目からは5,000円となる。

除外できない例

扶養家族の人数に関係なく、一律で家族手当を支給するもの

例)
扶養の人数に関係なく一律で10,000円を支給

このように、家族手当だからという理由で割増賃金の基礎賃金から除外することはできず、一律で支給している場合は家族手当を割増賃金の基礎賃金に含めることになります。

②通勤手当

通勤手当は、通勤距離や公共交通機関の料金に応じて支給される手当です。

除外できる例

通勤に要した費用に応じで支給するもの

例)
公共交通機関利用者は6ヵ月分定期代を、車通勤の場合は距離に応じたガソリン代を支給

除外できない例

通勤に要した費用、通勤距離に関係なく一律で支給するもの

例)
通勤手段や距離にかかわらず1日300円支給

家族手当と同様に、一律で通勤手当を支給する場合は割増賃金の基礎賃金に含めて計算します。

③別居手当(単身赴任手当)

別居手当(単身赴任手当)は、人事異動で扶養家族と別居を余儀なくされた従業員に支給する手当です。

別居手当は原則、割増賃金の基礎となる賃金からは除外されます。

④子女教育手当

子女教育手当は、子供の教育費を支援することを目的とする手当です。「教育手当」という名称で支給している会社もあります。

子女教育手当も原則、割増賃金の基礎となる賃金からは除外されます。

⑤住宅手当

住宅手当は、家賃や管理費など住宅に要する費用に応じて支給する手当です。

除外できる例

独身者は家賃の30%、家族持ちは家賃の50%を支給するものなど

例)
独身者で家賃60,000円の場合は住宅手当18,000円、家族持ちで家賃100,000円の場合は住宅手当50,000円を支給

除外できない例

住宅の形態ごとに一律に定額支給するもの

例)
賃貸住宅に住んでいる従業員は20,000円、持ち家の従業員は10,000円

住宅手当は家賃・費用に関係なく一律支給している場合は、割増賃金の基礎賃金に含めなければなりません。

従業員ごとに住んでいる家に応じて賃金が異なる場合は、除外されます。

⑥臨時に支払われた賃金

法律では「臨時的、突発的事由にもとづいて支払われた賃金」と言われてますが、具体的どういった賃金が該当するのか上げていきます。

臨時に支払われた賃金の具体例
  • 傷病手当金
  • 見舞金
  • 結婚祝金
  • 退職金
  • その他臨時的に支払われた賃金

臨時的で突発的な賃金という表現なため、あいまいなところもあるので、上記以外に「これは絶対臨時的賃金です」と言い切れません…。

迷ったら労働基準監督署に問い合わせていただいた方が正確です。

労サポくん

退職金は割増賃金の基礎賃金から除外されますが「前払退職金」は割増賃金の基礎賃金に含めますので注意しましょう。

⑦1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金

1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金とは、賞与など毎月発生しない賃金のことをいいます。

具体例は下記の通りです。

1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金の具体例
  • 賞与
  • 1ヶ月を超える期間の出勤成績によって支給される「精勤手当」
  • 1ヶ月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される「勤続手当」
  • 1ヶ月を超える期間にわたる事由によって算定される「奨励加給」
  • 1ヶ月を超える期間にわたる事由によって算定される「能率手当」

上記の賃金は「労働基準法施行規則8条」で具体的に定められており、割増賃金の基礎賃金から除外されます。

ちなみにそれぞれの手当の意味は次の通り。

  • 精勤手当:無欠勤もしくは欠勤が少ない場合に支給される手当
  • 勤続手当:会社などの組織に勤務している年数に応じて支給される手当
  • 奨励加給:賃金を数段階に区分し、区分の額に達するごとに一定額の加算を行う手当
  • 能率手当:業務の成果や労働者の能力によって額が変動する手当

法律で割増賃金の基礎となる賃金から除外できる賃金として定められている手当は以上です。

労サポくん

この7つの覚え方として、それぞれの頭文字を取り「カツベシリイチに(プラス)ジュウ」と覚えると私は教わりました。(参考までに)

その他労働の対価ではない賃金

これまで解説した割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当は、法律で定められているものです。

しかし実務をやるうえでは「労働の対価ではない賃金」も除外できる手当があることを知っていただきたいと思います。

「労働の対価ではない賃金」とは、働いたことで得た賃金ではないもののこと。

例えば下記のものがあげられます。

労働の対価ではない賃金例
  • 持株奨励金
  • 財形奨励金
  • 利子補給
  • 健康保険の給付金

奨励金は、制度に加入してる代わりに数%の給付金を支給する決まりになっている場合に発生する賃金です。持株や財形に制度に加入しているだけでもらえるものなので、労働の対価に該当しません。

利子補給は、社内預金などで発生する預金の利子です。社内で指定している預金にお金を預けるだけで発生するだけなので労働の対価ではありません。

健康保険の給付金は、健保から給付される給付金を給与で払っている場合に発生する賃金です。ケガや病気で限度額以上に費用がかかった場合に発生するものなので労働の対価ではありません。

その他、労働の対価ではない賃金は割増賃金の基礎となる賃金から除外されることになります。

名称ではなく実質的に判断する

割増賃金の基礎となる賃金か、そうではないかの判断は「〇〇手当」という名称では判断せず、どういう理由で支給している手当なのかで判断しましょう。

たとえば「住宅補助金」という名称だから「住宅手当ではない」と決めつけるのではなく、実質住宅手当と同じだから割増賃金の基礎賃金から除外になると判断するということです。

解釈に迷った場合は労働基準監督署など、専門の機関に問い合わせたうえで判断することをおすすめします。

まとめ

今回は、割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当を解説しました。

繰り返しになりますが、除外できる手当は下記の通りです。

  1. 家族手当(扶養手当)
  2. 通勤手当
  3. 別居手当(単身赴任手当)
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金

原則これらの手当・賃金は割増賃金の基礎賃金から除外します。

ただ、除外できない場合もあるので実質どんな手当なのかを確認して判断していただければと思います。

以上、割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当の解説でした。
参考になれば幸いです。

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管理人:キタ コウタロウ
社会保険労務士・Webライター
きた社労士事務所代表
給与計算や社会保険業務など労務業務を約10年、人事労務部門のマネージャーを約2年経験。現在は社労士・Webライターとして独立。
人事系メディアを中心に執筆・監修を行っています。
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