欠勤控除ってどうやって計算するんですか?
そんな悩みにお答えします。
欠勤控除の計算方法は労働基準法で「この計算式で計算してください」と定められていないため、会社で計算方法を決めなければいけません。
しかし、以下のような疑問も出てくるでしょう。
- 本当にこの計算であってるのか
- 欠勤控除の計算を見直したい
- 他の会社の事例を知りたい
今回はそんな欠勤控除の疑問を解決できる内容です。ぜひご覧ください。
欠勤控除の計算方法
欠勤控除のやり方は法律で決まっていないので、会社によって違います。
しかし、自由に計算していいわけでもありません。
まず大きな枠組みとして「控除するか」「減額した分を支給するか」の2つに分けられることを知っておきましょう。
- 控除方式:欠勤した分を給与から控除する
- 支給方式:出勤した分を支給する
どちらが正解ということはありません。
また、欠勤控除の計算には給与を「何で割るか」もポイントです。
例えば、次の計算が考えられます。
- 基本給+諸手当÷1ヶ月の平均所定労働日数
- 基本給+諸手当÷欠勤した月の所定労働日数
- 基本給+諸手当÷欠勤した月の歴日数
どれが正解というものはありません。会社にあった計算方法を選びましょう。
なお欠勤控除の計算方法は、給与担当者が自由に計算してしまうと従業員とのトラブルのもとになるため、就業規則に明記するとよいでしょう。
なお、就業規則に欠勤控除の規定がない場合でも規定がない場合も、不就労日も控除しない旨の合意があるなどを除いて、「月給額の所定労働日数で除して算出される一日当たりの賃金額に欠勤日数を乗じて算出するのが相当」という判例も出ています。(東京地裁H5.3.23)
時給の人が欠勤した場合は欠勤控除が発生しません。働いた分を支給するのが時給という働き方だからです。ただ、有休の出勤率を算定する時に欠勤日数が使われますので、時給の人でも欠勤日数の管理は必要です。
欠勤控除の対象となる賃金
繰り返しになりますが「〇〇手当は欠勤控除の対象となる賃金にしなければならない」と法律で決められているわけではありません。
基本的に欠勤控除の対象となる賃金は就業規則で決めて計算します。
とはいえ「この手当は欠勤控除の対象にしていいの?」と悩んでしまいますよね。
そこで、いつくか手当をピックアップして、欠勤控除として計算するかどうかを見解をご紹介します。
家族手当(扶養手当)
家族手当は、就業規則で定めれば欠勤控除として計算はできますが、計算対象にしない場合もあります。
家族手当とは、家族の生活を支える人に支給する趣旨として支給する手当です。
欠勤をしたからといって家族を扶養していることに変わりないので、会社によっては欠勤控除の計算対象から外す場合があります。
ただし、長期欠勤していた場合は家族手当だけが支給し続けることになるので、他の従業員と比べて不公平になるという理由で欠勤控除している場合もあります。
たとえば、家族手当が20,000円だとして、1ヵ月まるまる欠勤していた人に家族手当だけの20,000円だけ支給され続けるのは違和感がありますよね。
ちなみに私が給与計算していた会社は、家族手当を欠勤控除の計算に含めて控除している会社がほとんどでした。
住宅手当
住宅手当は、欠勤控除の対象としていない場合が多いです。
なぜなら、住宅手当は家賃の補填として支給しているからです。「1ヵ月まるまる欠勤した人は家賃全額払ってください」というのはちょっとおかしいですよね。
通勤交通費
通勤交通費は、欠勤控除の対象として計算しても構いませんが、定期代の問題をクリアするのが条件です。
定期代を通勤交通費として6ヵ月分もしくは3ヵ月分など、一括で支給している状態で欠勤控除の対象として通勤交通費を減額していいのかという問題があります。
もちろん、法律的には問題はありませんが、従業員本人が欠勤日数分だけ定期代の払い戻しをできないため、結果的に従業員が損してしまう可能性があるので注意が必要です。
なお、長期欠勤者の定期代を精算する場合は問題ありません。
固定残業代
固定残業代は、欠勤控除として日割り計算することは可能ですが、注意が必要です。
たとえば、固定残業代を20時間分を支給している会社で、20時間残業して5日欠勤した従業員に対して固定残業代を欠勤控除してしまうと、残業代の未払いが発生してしまいますよね。
このように残業代の未払いが発生しないよう注意しながら欠勤控除を考える必要があります。
たとえば「出勤日が15日未満の場合は10時間分支給、超えた分は別途支給」「全日欠勤している場合は固定残業代を支給しない」などのように条件を設定することもできます。
欠勤控除の計算例
続いて、欠勤控除の計算例をいくつかご紹介していきます。
最初の例は6月に3日欠勤があり、給与は基本給(資格給・業績給)のみの例です。
計算パターンは「控除方式」と「支給方式」の2つ。
割る日数として「1ヶ月の平均所定労働日数」「欠勤した月の所定労働日数」「欠勤した月の歴日数」の3つを用意しました。
6月(所定労働日数21日・歴日数30日)
欠勤:3日
資格給:150,000円
業績給:160,000円
①「1ヶ月の平均所定労働日数」で計算
年間所定労働日数244日の場合
244日÷12ヵ月=20.33日(1ヶ月の平均所定労働日数)
控除方式 | 支給方式 |
---|---|
310,000円÷20,33日×3日 =45,745円を控除 | 310,000円÷20.33日×18日(21日-3日) =274,472円支給 |
②「欠勤した月の所定労働日数(21日)」で計算
控除方式 | 支給方式 |
---|---|
310,000円÷21日×3日 =44,285円を控除 | 310,000円÷21日×18日(21日-3日) =265,715円支給 |
③「欠勤があった月の歴日数(30日)」で計算
控除方式 | 支給方式 |
---|---|
310,000円÷30日×3日 =31,000円を控除 | 310,000円÷30日×18日(21日-3日) =186,000円支給 |
このように「控除」か「支給」か、または「所定労働日数」か「歴日数」かで金額が異なることがわかると思います。
どれで計算するかは会社で決めて、就業規則に明記しましょう。
私の経験上「控除方式」の「1ヶ月平均所定労働日数」で割る会社が多かったです。給与計算をやるうえで一番わかりやすいからですね。
とはいえ、会社によって事情が違いますので、会社に一番適した方法で欠勤控除を計算しましょう。
続いて、2つ目の例です。
さまざまな給与が支給されている場合の例を取り上げます。
計算方法は「控除形式」で「1ヶ月の平均所定労働日数」で割る計算です。
6月(所定労働日数21日・歴日数30日)
欠勤:3日
基本給:250,000円
住宅手当:50,000円
時間外手当:25,000円
持株奨励金:500円
通勤交通費:80,000円(6ヵ月分定期代)
①「1ヶ月の平均所定労働日数」で計算
年間所定労働日数244日
244日÷12ヵ月=20.33日(1ヶ月の平均所定労働日数)
250,000円÷20.33日×3日=36,891円を控除
計算例2では、基本給以外にたくさん手当があるように見えますが、欠勤控除の計算対象となるのは「基本給のみ」です。
なぜかというと、それぞれ下記の理由があるからです。
・住宅手当:家賃の補填という意味なので欠勤控除の計算外
・時間外手当:残業時間に応じた手当なので欠勤とは関係ない
・持株奨励金:従業員が持株会を通じて株を購入する場合に支給されるものなので欠勤とは関係ない
・通勤交通費:定期代は基本的に欠勤の日割り精算が難しいため、この例では欠勤控除に含まない
以上のことから、基本給のみを欠勤控除の計算対象としています。
端数処理は、控除が「切り捨て」、支給が「切り上げ」で処理するのが一般的です。従業員の不利にならないように計算するためですね。
給与計算システムで欠勤控除するときの注意点
給与計算システムを使って計算をするときに、欠勤控除をどのようにしていますか?
もし基本給などの金額を直接減額している場合は注意しましょう。
たとえば、基本給250,000円を欠勤があるため、230,000円と直接変更を加えている場合です。
給与計算システムで直接固定給のマスタ変更をすると、残業代の計算に影響を及ぼす可能性があります。
大抵の給与システムでは、残業代の計算は固定給のマスタを参照し、残業時間をかけて計算しているるため、固定給のマスタを変更すると、時間外手当の計算が自動的に欠勤控除後の金額で計算されてしまいます。
もし、基本給などの金額を直接減額している場合はやり方の見直を検討しましょう。
通常、欠勤控除を行う場合は、固定給を変更せずに別項目で「欠勤控除」という項目を設けて、マイナス支給で欠勤控除を処理します。
たとえば、欠勤控除が20,000円だった場合は「基本給250,000円」「欠勤控除-20,000円」という処理方法です。こうすることで、固定給は変わらないので残業代の計算に影響せずに給与計算をすることができます。
まとめ
欠勤控除の計算方法は法律で決まっていないため、それぞれの会社で決めなければなりません。
ルールがあいまいだったり、担当者の引継ぎで受け継がれていたりなどで、誤った欠勤控除をしている可能性もあります。
欠勤控除が本当に正しいのか。今の計算が従業員にとって不利益になっていないか確認してみましょう。
以上、欠勤控除の計算でした。担当者様のお役に立てたら幸いです。
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